顎関節症

ドクターよりのメッセージ

顎関節症は、「口を開けると音が鳴る」「あごが痛い」「口が開きにくい」といった症状を伴う疾患ですが、その原因は実に多岐にわたり、単に顎の問題だけにとどまらないことも多いのが特徴です。

例えば、噛み合わせのズレ、歯ぎしりや食いしばり、日常の姿勢の悪さ、ストレスによる筋肉の緊張、また歯科治療後の噛み合わせ変化など、さまざまな要因が複雑に絡み合っています。だからこそ、顎関節症の治療は表面的な症状の緩和だけではなく、根本的な原因にしっかりアプローチする必要があります。

当院では、まず丁寧な問診と顎・咬合状態の詳細な診査を行い、必要に応じてレントゲンやCTなどの画像診断も活用しながら原因を明確にします。

その上で、スプリント(マウスピース)療法や咬合調整、生活習慣の指導、ストレッチや理学療法的アプローチなど、症状とライフスタイルに合わせた多角的な治療を提供しています。また、場合によっては整形外科や耳鼻咽喉科など他科との連携も視野に入れ、全身のバランスまで考慮したケアを心がけています。

顎関節症は放置してしまうと慢性化し、日常生活に支障をきたすだけでなく、精神的なストレスにもつながりかねません。少しでも違和感がある方は、どうか早めにご相談ください。あなたの「噛める」「話せる」「笑える」日常を、私たちは全力で守ります。


顎関節症とは

顎関節症とは、顎(あご)の関節やその周囲の筋肉、靭帯、骨などに異常が生じ、顎の痛み、口の開けづらさ、関節の異音(カクカク音など)などの症状が現れる病気です。比較的若年層から中高年にかけて多く見られ、男女比では女性に多い傾向があります。

「口を開けると痛い」「顎が鳴る」「大きく開かない」といった症状が続く場合、顎関節症の可能性があります。当院では、適切な診査・診断を通じて、患者さま一人ひとりの原因に応じた治療を提供いたします。

顎関節症の主な症状

  • 口を開けるときにカクッ、ジャリッと音がする(関節雑音)
  • 顎関節やその周囲の筋肉が痛む(開口時の痛み、咀嚼時の痛み)
  • 大きく口を開けられない(開口障害)
  • 口が左右にまっすぐ開かない、違和感がある
  • 頭痛、肩こり、耳鳴り、めまいなどの関連症状

症状は一時的なこともあれば、慢性的に続くこともあります。軽度であれば自然に改善するケースもありますが、悪化する前に歯科での評価とケアを受けることが重要です。

顎関節症の主な原因

噛み合わせの不良

歯のかみ合わせに不調和があると、顎の関節や筋肉に偏った負荷がかかり、関節の機能に影響を与えます。歯の欠損や咬合不良、詰め物・被せ物の高さの不一致も一因です。

歯ぎしり・食いしばり

夜間の歯ぎしりや日中の無意識な食いしばり(クレンチング)は、顎関節や咬筋に過剰な負荷をかけ、痛みや関節の異常を引き起こす原因となります。

ストレスや緊張

精神的ストレスが筋肉の緊張を高め、無意識に顎を動かしたり食いしばったりする行動につながります。現代社会においては心理的要因が大きく関与するケースも増えています。

外傷や習癖

転倒や事故などによる顎の打撲、頬杖・うつぶせ寝・片側噛みなどの生活習慣も、関節や筋肉への負荷を増やし、慢性化させる要因になります。

顎関節症の分類(日本顎関節学会による分類)

  • Ⅰ型: 咀嚼筋障害(筋肉由来の痛み)
  • Ⅱ型: 関節包・靭帯障害(関節周囲組織の損傷)
  • Ⅲ型: 関節円板障害(カクカク音や円板転位)
  • Ⅳ型: 変形性顎関節症(関節の骨変形・変性)

症状が重複することも多いため、当院では診査・検査を通じて、複合的に原因を見極めます。

当院で行う顎関節症の治療

マウスピース療法(スプリント療法)

夜間就寝時に「スプリント」と呼ばれるマウスピースを装着することで、関節への負担を軽減し、筋肉の緊張を緩和します。症状の多くがこの治療で改善します。

噛み合わせの調整

咬合が原因で関節に偏った力が加わっている場合、詰め物・被せ物の高さ調整や全体的な咬合調整を行います。必要に応じて矯正治療をご提案することもあります。

生活指導・習慣改善

頬杖や片側噛みなどの日常習慣が関節に悪影響を与えることがあります。姿勢の指導やTCH(Tooth Contacting Habit:歯の接触癖)の改善指導も行います。

筋肉マッサージ・理学療法的アプローチ

咬筋や側頭筋の緊張が強い場合、マッサージや温熱療法などを併用して筋緊張を和らげるサポートも行います。

医科との連携

難治性の場合、口腔外科や耳鼻科、整形外科との連携を行い、画像診断や薬物療法を含めた統合的アプローチをご提案します。

顎関節症は「放置しない」ことが大切です

顎関節症は放っておくと慢性化したり、関節円板の変位や骨の変形など取り返しのつかない状態に進行することもあります。「一時的な不調かな」と軽視せず、早めの相談が予後改善のカギとなります。

また、顎の不調は歯の破折、噛み合わせのズレ、頭痛や肩こりなど、全身の不定愁訴にもつながるため、トータルな視点でのケアが必要です。当院ではCTやマイクロスコープを用いた精密な診査・診断と、個々に合わせた治療法をご提案します。

適切な診断と治療で、顎の不調を改善へ

顎関節症は、咬合、筋肉、生活習慣、ストレスなど、さまざまな因子が複雑に絡み合って発症する疾患です。当院では原因をしっかりと見極めたうえで、マウスピース療法・咬合調整・生活指導など多角的にアプローチを行い、再発の予防まで見据えた診療を行っております。

「顎が痛い」「音がする」「噛みにくい」などの違和感があれば、どうぞお気軽にご相談ください。適切なケアを受けることで、日常生活の快適さが大きく変わるはずです。