口腔筋機能療法(マイオブレース)

ドクターよりのメッセージ

マイオブレースは、歯を「無理やり並べる」治療ではありません。口呼吸・低位舌・舌癖・口唇閉鎖不全といった、歯並びを乱す根本原因に向き合い、呼吸・舌位・嚥下・姿勢という土台を整えるためのプログラムです。

私はこの“土台づくり”こそが、お子さまの将来にとって最も価値のある投資だと考えています。よく「何歳から始めるのがベストですか?」と質問いただきますが、成長期の早い段階でスタートできれば、顎の発育や鼻呼吸の確立に良い影響が得られる可能性が高まります。

一方で、マイオブレースは魔法の装置ではありません。日々の装着と短時間のトレーニングをコツコツ積み重ねること、そしてご家庭の伴走が結果を大きく左右します。

当院では、ただ装置をお渡しするのではなく、月ごとの到達目標をわかりやすく提示し、できたことを一緒に喜びながら次のステップへ進む“コーチング型”の支援を大切にしています。場合によっては、拡大装置やワイヤー・マウスピース矯正と段階的に併用し、見た目と機能の両立を図ることもあります。

最終的なゴールは「きれいに並んだ歯列」だけではありません。しっかり噛めて、ぐっすり眠れ、口を閉じて鼻で呼吸できること。これが将来の健康と学びの集中力、そして自信ある笑顔につながります。小さな一歩の積み重ねが、大きな変化を生みます。私たちと一緒に、無理なく楽しく続けられる最適な計画を作りましょう。まずは今できることから、丁寧に始めていきませんか。


口腔筋機能療法(マイオブレース)とは

口腔筋機能療法(MFT:Myofunctional Therapy)は、口呼吸・低位舌・舌癖・唇や頬の筋バランスの乱れなど、歯並びを悪くする“機能的な原因”にアプローチするトレーニング療法です。マイオブレース(Myobrace®)は、そのMFTを日常で実践しやすくするためのマウスピース型機能訓練装置と、呼吸・舌位・嚥下・姿勢のトレーニングプログラムを組み合わせた体系的なメソッドです。「悪い歯並びを力で並べる」のではなく、「乱れの原因を正し、成長の力で整える」ことを目指します。

対象年齢と開始時期

推奨は4〜12歳の成長期(混合歯列期)ですが、個々の発達や症状により前後します。早期に始めるほど、顎の発育や鼻呼吸の獲得、咬合の誘導に良い影響が期待できます。永久歯列の方でも、口腔機能の改善・後戻り予防の観点で有効な場合があります。

こんなサインはありませんか?

  • 口がポカンと開いている(口呼吸が多い)
  • 舌が低い位置にあり、飲み込み時に舌を前に押し出す
  • 指しゃぶり・爪噛み・頬杖・うつ伏せ寝が続いている
  • いびき・いびきを伴う浅い睡眠、朝の疲労感
  • 前歯が開いて噛み合わない/出っ歯・受け口傾向
  • 食べ方が遅い、噛む回数が少ない、口を閉じて食べられない

これらは歯並びだけでなく、発音・姿勢・睡眠の質にも影響します。早めの評価がおすすめです。

マイオブレースの基本構成

1. 専用トレーナー(マウスピース型装置)

段階に応じて硬さや形状の異なるトレーナーを日中1〜2時間+就寝中に装着。舌を正しい位置(スポット)に誘導し、口唇閉鎖と鼻呼吸を促しながら、口腔筋の機能を整えます。

2. 毎日のホームトレーニング

  • 鼻呼吸訓練:口唇閉鎖・横隔膜呼吸の獲得
  • 舌位・嚥下訓練:正しい舌の姿勢と飲み込み
  • 口唇・頬筋の強化:口輪筋・頬筋のバランス改善
  • 姿勢・食育指導:咀嚼・嚥下を支える全身協調

3. クリニックでのコーチング

月1回程度の来院で、装着状況・トレーニングの習熟度・鼻呼吸の達成度をチェック。習熟段階に応じて課題を調整し、「できる」を積み重ねるコーチングを行います。

得られる主なメリット

  • 原因へのアプローチ:歯列不正の背景(口呼吸・低位舌・悪習癖)を是正し、後戻りしにくい基盤をつくる
  • 顎の発育を促す:舌位の改善で上顎の横幅成長を促し、抜歯や大掛かりな矯正を回避できる可能性
  • 全体の機能改善:鼻呼吸化で睡眠の質や集中力、発音・姿勢の改善にも好影響が期待
  • 装置の負担が少ない:ワイヤー矯正前の前処置・サポートとして有利

※効果には個人差があり、協力度(装着時間・日々の練習)によって成果が大きく左右されます。

適応範囲と留意点

適応しやすい例

  • 混合歯列の軽度〜中等度の歯列不正
  • 口呼吸・低位舌・舌突出癖・口唇閉鎖不全が目立つ
  • 上顎の幅不足・前歯部の開咬/突出傾向

適応が難しい例

  • 骨格的不調和が大きい(下顎前突・重度の上下顎劣成長など)
  • 重度叢生で抜歯や急速拡大などの矯正処置が不可避
  • 習慣・協力度の確保が難しく、装着・練習が継続できない

※マイオブレース単独で完結する症例もあれば、ワイヤー矯正・マウスピース矯正の前後で併用し、治療効率・安定性を高める使い方もあります。

治療の流れ

1. 初診相談

呼吸様式・口唇閉鎖・舌位・姿勢・食習慣を評価し、目標とロードマップを共有。

2. 精密検査

口腔内スキャン・写真・セファロ/必要に応じCTで顎顔面の発育状態を分析。

3. プログラム設計

日々の装着時間・宿題(トレーニング)・来院頻度を決定。

4. 装置開始

適切なステージのトレーナーをフィッティング。家庭用の練習メニューを配布。

5. 月次コーチング

達成度を確認し、呼吸→舌位→嚥下→咀嚼→姿勢の順で段階的にレベルアップ。

6. 評価と次段階

歯列・顎幅・機能の改善度に応じ、装置のステップアップや矯正治療との併用を判断。

7. 維持期

獲得した鼻呼吸・正しい舌位を維持し、後戻り予防のホームケアを継続。

おうちでの取り組み(目安)

  • 装着時間:日中1〜2時間+就寝中(装着は声掛け・ルーティン化がコツ)
  • トレーニング:1回5〜10分を毎日(舌先スポット練習、鼻呼吸ドリル、口唇閉鎖・嚥下)
  • 生活習慣:食事は「よく噛む・口を閉じて飲み込む」、姿勢は背中を伸ばし鼻呼吸

継続が最大の成功因子。ご家族のサポートが成果を大きく左右します。

当院の取り組み

  • 多角的診断:CT・セファロ・3Dスキャンで発育と機能を同時評価
  • コーチング重視:「できた!」を積み重ねる面談と宿題設計で継続をサポート
  • 予防×矯正の統合:むし歯・歯周管理、栄養・姿勢指導まで包括的に伴走
  • 併用設計:必要時は拡大装置・表側/裏側矯正・マウスピース矯正と組み合わせ、最終到達点を高めます

費用・期間の目安

期間は6か月〜2年が目安(症例・協力度で変動)。費用は装置・コーチング・再評価を含むプログラム型でご提示します。
分割・クレジットにも対応。詳細はカウンセリング時に個別見積もりをご案内します。

リスク・副作用

  • 装置装着初期の違和感・発音しづらさ・唾液増加(多くは数日〜数週で慣れます)
  • 清掃不足による口臭・う蝕・歯肉炎(毎日のブラッシングと定期クリーニングで予防)
  • 協力度が低いと効果が出にくい/所要期間が延びる

よくあるご質問

Q. どれくらいで効果が出ますか?

機能面は数週間〜数か月で変化が見え始めますが、歯列・顎幅は個人差が大きく、6か月〜2年程度の中期的視点が必要です。

Q. 矯正装置は不要になりますか?

マイオブレースのみで整う症例もありますが、仕上げの矯正を併用した方が美的・機能的完成度が高いケースもあります。

Q. 学校や習い事に支障は?

日中は家での装着時間を調整可能。就寝時装着が基本なので、学校生活への影響は最小化できます。

まずはご相談ください

歯並びは結果であり、原因は「呼吸・舌・嚥下・姿勢・習慣」にあります。マイオブレースはその原因に向き合い、成長の力を最大限に活かすアプローチです。お子さまの将来のために、今できる最善の一歩を一緒に設計しましょう。お気軽にご相談ください。